【AI防災】人工知能を使って自然災害を予測できる?
自然災害の監視、予測、対策のアプローチは、テクノロジーの発達によって、前世紀に比べて大きく進歩しています。その中には、AI(人工知能)の活用も含まれています。人工知能は、将来の出来事を予測することができるため、災害がもたらす人的・物的コストの削減に大きな効果を発揮してくれる可能性を十分に秘めているのです。では以下で詳しく見てみましょう。
地震予知アルゴリズム
地震が起きるかどうかの予知は、人間が気づかないくらい程度の小さな揺れではなく、突発的な大地震の発生を予測することが主な目的です。そのため、人工知能は大地震の早期警戒指標を特定し、分析するための強力なツールになりつつあります。しかし、研究者はここで大きな壁にぶつかります。それは、地震学者が最も予測したいマグニチュードが高い大地震は、発生する状況が特殊であるため、稀にしか発生しない最も希少な地震でもあるという壁です。
予測したい地震が希少であるがゆえに、アルゴリズムを効果的に学習させるためのデータ量が不足しているという問題が浮き彫りになります。一方、揺れが小さくて目立たない地震は、高強度地震と同じ断層に沿って定期的に発生しており、高強度地震と同じ物理・力学が関係しています。そのため、地震を理解し予知するためには、こうした小さな地震が未開発の貴重な情報源となるのです。
スタンフォード大学の研究者グループは、この問題を解決するために、「地震トランスフォーマー」と呼ばれる新しい機械学習アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、人間の評価に匹敵する精度を備え、より多くの地震、特に既存の検知方法では、通常見逃されてしまう低強度地震を特定することが可能なのです。この検出能力の向上は、トップレベルの医療用画像処理と音声キャプチャーのアルゴリズムを修正し、微弱な信号も検出できるようにしたことで見事実現させました。
以上のことから、最も小さなレベルの地震を識別し、調査することは非常に重要です。こうしてはじめて、震源が断層に沿ってどのように分布しているのか、どのように地震が発生し、どのようにすれば防止できるのかを知ることができるのです。小さな地震の観察を通じてより多くのデータを集めることができれば、将来起こりうる大災害をより正確に予測することができるようになるかもしれません。
洪水予測システム
地形の凹凸、積雪、雪解け、水位の上昇など、どの場所が大洪水に見舞われるかを予測するのは困難なことです。そこで、科学者やシリコンバレーの大企業は、地図から得られるデータだけでなく、衛星写真から得られるデータをもとにしたAI技術を導入し、膨大な数の洪水の特性を予測しようと試みています。例えば、Googleの研究者たちは、何千枚もの衛星写真を集めて、激しい雨がよく降るインドの地形のコンピューターモデルを開発しました。
Googleは、このコンピュータモデルを使用して、洪水が起きたときに河川がどのような動きで反応するか、何度もシミュレーションを行いました。インド政府から提供されたリアルタイムの降雨データを数値モデルに組み込み、シミュレーションした川の動きの変化を調べることで、近い未来に差し迫った洪水を事前に予測できるようになったのです。これにより、Googleマップで検索して洪水が予測されていれば、数日前に余裕を持って政府に知らせることができます。あとは、スマートフォンに通知が届くようにするだけで、地元の住民は災害に備えて避難をすることが可能です。